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アニメーションの撮影とエフェクト



エフェクトについて

デジタルにおいても大切な基本



 アニメーションがデジタル化されようとされまいと、依然欠く事のできない基本が存在します。なまじデジタルエフェクトでそれっぽい絵が作れるのでごまかされやすいですが、この基本を欠くといくらデジタルで饒舌に飾り立てても、ある一定のところで「カットの肉付き」がストップします。
 「カットの肉付き」がストップする‥‥とは、何種類もエフェクトを施しても「それ以上にならない」という限界点です。

 「スケール感が出ない」
 「おもちゃっぽい」

 これらの「よくない」はデジタル行程、撮影・エフェクトの問題と指摘される事が多々ありますが、それ以外の要素に帰因する場合もまた多いのです。

 私は経験から、メカ・エフェクトには次のような要素があると観察しています。「それらしく」見せるための要素です。

 縦軸はスケールの要素、横軸が作業セクションです。重なった部分は起こりうるミス(障害)の代表例です。

絵コンテ(演出) 作画 色指定・美術 撮影・エフェクト
動きのスケール カット内容に対して無理な尺を設定 タイミングのミス 不可侵 撮影バンク素材の不適当
フォルムのスケール 不可侵 フォルム・ディテールのミス 不可侵 撮影バンク素材の不適当
色のスケール 不可侵 不可侵 色のミスマッチ 撮影効果の不足・不適当

 私はこの「3つのスケール」を、エフェクトを担当する際の基本事項としてとらえています。

 表中の「不可侵」とは自分らのセクション内では物理的に手を出せない領域を意味しています。例えば、原画ならば色は塗れないので、色は不可侵と言う事になります。もちろん色指定と打ち合わせする事はできますが、原画自らは手を下せませんので、そのように呼んでいます。

 では、以下各要素に対しての解説です。


動きのスケール
 動きのスケール感、規模を指しています。メカ・エフェクトが動く時は、それ自身のスケールに由来するタイミングが必要です。例えば...

・空母が6秒で海に沈む
・油田火災の巨大ケムリを5秒でフェードアウト
・米粒大のジャンボジェットが1秒で画面左からへ移動する

...のような例を考えてみれば、私の言っている「動きのスケール」がおわかりになると思います。
 上の3つの例は少なくとも私的にはNGです。
 空母の重量・全長、空を覆い尽くさんばかりの黒煙、ジャンボの全長と飛行速度、パッと考えただけでも上記の内容は迂闊です。

 以下にスケールのミステイクの代表例を上げておきます。

スケールミステイクの例
演出 もともと無理な内容を記述、または内容に対して無理な尺を設定
作画 内容に対して不適当なタイミング(シート)をつける
撮影エフェクト 付加するガス、ケムリなどバンク素材のタイミングが不適当

 動きのスケールを制御するとその効果は絶大で、多少のディテールや色の不具合はカバーできるほどの力を持っています。

 シンプルなケムリでも、動きのスケールが相応なら巨大感は出せます。しかし、1枚絵でどんなに巨大なディテールを持って細かく描かれたケムリでも、動きが速すぎたりすると途端にスケールが小さくなります。

フォルムのスケール
 つまりは見た目のスケール感を指しています。(念のため、フォルム、イコール、絵の見た目…では無いです。この場の状況に合わせて噛み砕いて言っているだけです)

 動きのスケールでも記述しましたが、まず優先されるのは動きです。動きをキッチリ制御した上で、フォルムやディテールをスケールに準じて描くと、相乗効果でよりリアル、よりソレっぽくなります。

 フォルムのスケールでよくつまずくのは炎です。炎はケムリと違いスローモーションにしてもなかなかスケール感が大きくなりません。フォルムでスケールを描写する必要があるのです。
 そのせいか、炎の描写は昔から敬遠されます。特に大火事はかなり難しい部類に属します。燃える素材(木材・ガス・石油等)によって、炎上のサイクルや炎のフォルムが大きく変動するので、一筋縄ではいきません。

 撮影・エフェクトで一例を挙げると、一番手前に置くガスのスケールがミスマッチで、「不思議な絵」になっている事があります。ガスの模様の大きさが小さすぎ、奥行きのつじつまが合わなくなっているためです。
 霧やケムリのシーンで臨場感を高めるためによく用いられる効果ですが、スケールを間違えると「合成映像」っぽくなりかえって逆効果です。

色のスケール
 空気遠近法に代表されるような、色によるスケール感の事です。

 一般的に昼光の場合、遠くに行けば行く程青くかすんで行きます。美術や色指定はそうした事を計算して絵を作りますが、なんらかのミスでそれがうまくいってない場合、スケールの不整合が現れます。

 撮影エフェクトでの例を挙げると、セル部分にパラ(シャドウ)を入れて暗く色を落とした場合、色指定が美術に合わせて指定した時点と色・明るさが変わってしまい不整合のもとになってしまう事があります。

 青く霞んだ巨大戦艦の横に、最暗部がしっかりと黒いロボットが立っていたら、同じ場所にいるように見えないですね?


 ざっと書きましたが、この3つの要素を完璧にこなすのは、並大抵の事ではできません。

 しかし、可能な限り「おさえておきたい3つのスケール」として、私が作画・エフェクト作業に関わる際、いつも念頭に置く基本事項です。




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