Program
撮影ツールとしてのMacOSXとUNIX


実戦ツール紹介

みつばち

 撮影・エフェクト作業後は次のセクションである「編集」に映像が渡されますが、劇場などの大サイズの作品は編集用の「ダミーファイル」とも言うべきQuicktimeムービー等の作成も必要となってきます。しかしAfter Effectsで正規サイズの連番と編集用ムービーファイルの2回をレンダリングしているとレンダリング時間が2倍以上になります。正規サイズの連番レンダリング後に編集用ムービーファイルをAfter Effectsで新たに書き出すのもそれなりに手間がかかります。

 そこで編集用ムービーファイル及びビデオレコーダー用のD1サイズの連番ファイルを作成するソフトウェアを作る事にしました。Quicktime書き出し部分は以前より開発していたmexより流用し、ES(エクスポートセッティングス)ファイルにてCodecを自在に選択できる仕様にしました。一般的なアニメーション圧縮などのCodecに加えて、CinewaveやAvidなどのノンリニア編集ソフトウェア用のESファイルを用意すれば、書き出しCodecを自由に増やす事が可能です。

 また劇場作品などの場合は、下部にカットボールド(スレート)とフレームナンバーを常駐表示させて、閲覧中のムービーの基本情報をいつでも視認できるようにしました。

 「みつばち」のバージョン0.291は、2004年冬に作業した「テニスの王子様・劇場版/長編」で実際に運用されました。‥‥というか、「劇場テニプリ」の為に作った‥‥と言った方が、的を得た言い方かも知れません。現在ベータ版(2005年4月時点でバージョン0.31)のため、処理速度や機能などに見直しの余地はあるものの、現在afxにて稼働中です。

 ちなみに「みつばち」「くまばち」などの「はち」シリーズは、「撮影・エフェクトから編集へ素材(密の原料)を運ぶ」をイメージして命名されています。



 「みつばち」に限らず、映像関連の自己開発で苦労するのはリサイズ時の描画品質です。日本の商用アニメ作品はエッジの鋭い描線で形成されているため、例えば720*540から720*486にリサイズした際に、画像にジャギー(Jaggy)が発生してしまう事があります。また、各メソッドによって画質がキツくなる・ぼやけるなどの「クセ」が現れます。以下はオリジナルのファイルを、各アプリケーションでリサイズしてみたものです。


オリジナルファイル
微妙に傾いた1ピクセルのラインと幾何形。アニメ作品におけるリサイズ品質を判断する場合に適しています。



Photoshop(バイキュービック)にてリサイズ
各業界でPhotoshopがスタンダードの地位を確立している状況から鑑み、この品質を「アニメ業界標準」として設定するのが適当でしょう。



sipsコマンドにてリサイズ
Photoshopに比べて、よく言えば「滑らか」、悪く言えば「ボケて、線が太っている」結果となっています。もともとエッジのキツいデジタル彩画には、このくらいの「角(かど)なめし」効果があっても良いとは思います。(フリッカー対策で既にぼかしている場合は2重ぼかしになる危険性はあります。)



Quicktimeにてリサイズ
Photoshopに比べて、線に多少「ムラ」が出ていますが、使用目的によっては(Photoshopと並べて見分けがつく人もあまりいないでしょうから)許容範囲でしょう。

注)ご存知かも知れませんが、Quicktime Playerは初期状態では「高品質で再生する」モードが非アクティブです。リサイズ後の画像品質をQuicktime Playerで視認する場合は、上記パネルの当該チェックボックスにチェックを入れて、「高品質で再生する」モードにする必要があります。ちなみに、コピーペースト時にクリップボードに記憶される画像は、「高品質で再生する」モードの状態に関わらず、高品質の画像が記憶されるので心配ありません。


 微妙に傾いた水平線の処理を見てもらえばお解りの通り、どれも一長一短です。アニメの線画にどれが向いているかは一概には判断出来ませんし、アニメ制作で扱われるデータ化された線画はいつも一定条件とは限りません。「みつばち」はそうした状況を踏まえて、リサイズのメソッド(計算方法)を複数用意して、作品ごとに対応出来るよう設計しています。


 この「みつばち」が数年後にどのような運命をたどっているかは解りません。旧来のベーカム・デジベ納品方式が今後何十年も生き残るとは思えませんし、データ納品の際にどの形式・Codecが選択されるかも現在からは確定できません。私の在籍するプロダクション・アイジー内でもいくつかの受け渡し形式が存在しますし、他社とやり取りした場合はさらに形式が増えます。今後も「みつばち」は、そうしたいくつもの受け渡し形式に「翻弄」されていく事でしょう。

 「みつばち」はネットワークと現用の映像ソフトウェアを活かした方法、すなわち、高価なプロ用映像機器(ありていに言えば、デジベなど)を配備・経由しないワークフローを思い描いて作られたソフトウェアです。After Effects(撮影)とAvid・FCP(編集)とを効率よく繋ぐソフトウェアとして立案・設計されたものですが、ワークフロー自体に改善の余地はたくさん残されていますし、映像フォーマットもどんどん進化していくでしょう。「みちばち」がそうした時代に変動に追随していけるものか、実はまだハッキリとは読めていないのです。

 2010年にもし「みつばち」がまだ働いていたら、産み・育ての親としては何とも感慨深く感じる事でしょうね。



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